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6.22025
サイト公開後のチェックについて
Webサイトの公開は、単なる作業の「終了」ではなく、ブランドやサービスを社会に向けて発信するスタート地点です。
しかし、公開前後のチェックが不十分だと、「フォームが動かない」「表示が崩れている」「検索に出てこない」といった問題が発生し、せっかくのサイトが本来の力を発揮できません。このページでは、実務の現場で求められる公開前後のチェック項目を体系的に解説します。
公開とは「テスト環境から本番環境への移行」
Webサイトの公開は、一般に「リリース」や「ローンチ」といった言葉で表現されますが、実務上はテスト環境から本番サーバーへの切り替えや、納品ファイルの受け渡しを指すケースが多く見られます。
いずれの場合でも、この移行のタイミングでどれだけ品質を確保できるかが、後の集客や運用成果を左右する重要なポイントになります。
最近では、WordPressを用いたサイト構築が主流となっており、「WP Maintenance Mode」などのプラグインを使って一時的にアクセス制限をかけ、外部から見えない状態で制作・検証を行う方法が一般化しています。この場合、公開とは「その鍵を解除し、誰でも閲覧できる状態にすること」を意味します。
こうした鍵付きサイトの運用では、別サーバー上に仮公開し、動作に問題がないことを確認したうえで「WPvivid Backup Plugin」などの複製プラグインを使って本番環境へ移設する方法があります。一方で、あらかじめ本番サーバー上でドメインを当て込み、外部からのアクセスは遮断したまま構築を進め、最終的に公開のタイミングで鍵を外すというスタイルも一般的です。
どちらの方法を採用するにせよ、本番移行に際しての段取りと品質管理は、Webサイトの価値を左右する重要な工程であることに変わりはありません。
公開前に行うべきテクニカルチェック
1. アクセシビリティの確保
アクセシビリティとは、誰もがストレスなくWebサイトを利用できるようにするための考え方や工夫のことです。
たとえば、目が見えにくい人が音声読み上げソフトを使ってWebページを読むとき、画像に説明文(alt属性)がついていれば、内容を正しく理解することができます。また、色覚に偏りがある人でも情報を読み取れるように、色だけで重要性を伝えず、文字や形でも伝える工夫が必要です。さらに、高齢者やパソコンに不慣れな人でも迷わず操作できるように、文字サイズを大きめにしたり、リンクやボタンを分かりやすく配置することもアクセシビリティの一部です。
つまりアクセシビリティとは、障がいの有無や年齢、利用環境に関係なく、すべてのユーザーが使いやすいWebサイトを目指すこと。サイトを「見やすく」「読みやすく」「操作しやすく」する配慮が、誰にとっても優しい設計につながるというわけです。これは法律や制度だけでなく、信頼されるWebサイトをつくるための基本的な姿勢でもあります。
2.クロスブラウザ・クロスデバイステスト
Webサイトを公開する前には、Chrome、Safari、Edgeといった主要なブラウザはもちろん、iPhoneやAndroidといったスマートフォンの実機で表示や挙動の確認を行うことが重要です。現在ではレスポンシブデザインが一般的な制作手法となっているため、ブラウザごとのレンダリング差異だけでなく、画面サイズごとのレイアウト調整にも注意が必要です。
ただし現実的には、いわゆる「ガラホ」などの特殊な端末にまで対応しようとすると、どこかで改行位置がおかしくなるなど、細かな不具合が生じやすくなります。すべての端末に完全対応するのは非効率なため、6.0〜6.5インチ程度の一般的なスマートフォンサイズを基準に調整するのが現実的です。
とくに、フォーム入力やナビゲーションの操作といったユーザーの行動に関わる部分は、UX(ユーザー体験)に直結するため、念入りな動作確認が求められます。
フォーム・EC機能のテストは「最後まで」
申し込みフォームやショッピングカートといったコンバージョン直結の部分は、最後までユーザーになりきって操作することが重要です。
たとえば決済フォームでは、PAY.JPのテストカード情報を利用してクレジットカード決済の流れを検証できます。出来ればご自身のクレジットカードで実際に決済をしてみることをお勧めします。
送信完了後のサンクスページや、自動返信メールが届くかどうかも確認しておきましょう。
テキスト・画像などコンテンツ面の確認
原稿や画像の最終チェックも欠かせません。以下の点を押さえましょう。
・誤字脱字、情報の食い違いがないか
・画像が正しく表示されているか
・alt属性が設定されているか
CMSを使用している場合は、クライアント側でも直接コンテンツを修正できる体制を整えておくと、公開後の調整や微修正が非常にスムーズになります。
また、注意すべき点として、サイト制作者自身はページ内の情報が「正しいもの」と思い込みやすいため、誤字・脱字や細かなミスに気づきにくい傾向があります。そのため、公開前のタイミングで制作者以外の第三者にチェックしてもらうことをおすすめします。客観的な視点で確認してもらうことで、「まさか」という箇所のミスに気づけることがよくあります。
特に重要なのが、電話番号のチェックです。ページ上に表示されているバナーやWEBボタンの番号が正しくても、タップ時に発信される番号が異なるケースがあります。たとえば、見た目には「028-000-0000」と正しい番号が記載されていても、リンクのtel:タグの中身が「000-000-0000」のままになっていた、というのはよくあるミスです。これは、テスト中に仮番号を入れていた状態がそのまま残っているパターンです。
あるいは、数字の1桁違いやコピペミスで「028-000-0001」といった単純な打ち間違いも起こりがちです。必ず実機でボタンやリンクをタップし、実際に発信できるかを確認するようにしましょう。
プログラム連携がある場合は「連結テスト」まで
JavaScriptや外部API、予約システムなど、複数のプログラムが絡むWebサイトでは、機能テスト・連結テスト・稼働テストをそれぞれ分けて丁寧に行う必要があります。
個々の機能が単体では正常に動作していても、連携時に思わぬ不具合が発生するケースは少なくありません。特に本番公開後にそれが発覚すると、ユーザーの信頼を損なうリスクが高くなります。事前に徹底したテストを行うことで、公開後のトラブルを未然に防ぐことが可能です。
WordPressサイトの場合は、さらに注意が必要です。複数のプラグインを導入していると、プラグイン同士が競合(バッティング)して動作不良を引き起こすことがあります。また、WordPress本体やPHPのバージョンが更新された際に、既存のプラグインがそれに対応できず、エラーを起こすこともあります。
そのため、以下のような点は常に意識しておくべきです。
・プラグイン同士の相性に問題はないか
・使用中のテーマやプラグインは現在のWP/PHPバージョンに対応しているか
・バージョンアップ後に表示崩れや動作エラーが起きていないか
サイトの土台にかかわる部分だからこそ、慎重な検証と継続的なチェック体制が求められます。
サイトチェックを“当たり前”にして、品質を標準化する
Webサイトの品質は、「デザインが美しいかどうか」だけで決まるものではありません。技術的な正確さ、安定した運用、そしてユーザーにとっての使いやすさ――こうしたすべてを支えるのが、公開前後の丁寧なチェックプロセスです。
納品や公開は決してゴールではなく、むしろ成果創出のスタートラインです。だからこそ、これらの工程を制作フローの中にあらかじめ組み込み、品質管理を標準化しておくことが、ビジネス成果を上げる最も現実的な近道になります。
さらに、公開後には実際にサイトを使ってくれたユーザーや関係者の声に耳を傾けることも非常に重要です。とくにECサイトなどのコンバージョン重視型のサイトでは、「ちょっと面倒」「分かりづらい」と感じられるだけで、購入や申込みの機会を逃してしまう可能性があります。
問い合わせフォームや申込みフォームについても同様で、すべての項目を必須にしてしまうと、ユーザーが途中で離脱してしまうことがあります。極端な例ではありますが、たとえば「名前」と「メールアドレス」だけを必須項目にし、それ以外は任意入力にするだけでも、完了率は大きく向上します。電話番号や住所、年齢、性別などの必要な情報は、コンバージョンが成立した後に丁寧にヒアリングすればよいのです。
ユーザー目線での利便性と、ビジネス上の成果を両立させること。そのためには、制作時の設計と公開後の改善を両輪で回していく姿勢が求められます。
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